商談や会議を深める質問のコツ：日々の「聞く」ことから見つけた小さな発見
質問の質を高めることの重要性
日々の業務の中で、私たちは様々な場面で質問をしています。商談でお客様に課題を尋ねる、会議で同僚の意見を聞く、上司に指示の背景を確認するなど、質問はコミュニケーションの要と言えるでしょう。しかし、漫然と質問するだけでは、本当に必要な情報や相手の本音にたどり着けないことがあります。より深い理解を得たり、議論を前に進めたりするためには、「質問の質」を高めることが不可欠です。
では、どのようにすれば質問の質を高められるのでしょうか。何か特別なトレーニングが必要なのでしょうか。私が日々の生活や業務の中で気づいたのは、そのヒントは意外にも「聞くこと」や「当たり前」の中に隠されているということです。
日常の「聞く」ことに隠されたヒント
私たちは普段、相手の話を聞くとき、その内容を理解しようと努めます。しかし、一歩進んで「なぜ相手はそのように言うのだろうか」「この言葉の背景には何があるのだろうか」と意識を向けてみると、新たな発見があります。例えば、
- 同僚が「最近忙しくて」と言った時: ただ「大変だね」と受け流すのではなく、「具体的に何に時間を取られているのだろう」「何か手伝えることはあるだろうか」と、その背景にある状況や感情を想像してみる。
- ニュースや記事を読む時: 書かれている事実だけでなく、「なぜこの記事が書かれたのだろう」「書き手の意図は何だろう」と、情報の発信元や目的に思いを馳せてみる。
このように、日常の何気ない会話や情報に触れる際に、単なる表面的な内容だけでなく、その「裏側」や「背景」に意識を向ける練習をすることで、自然と物事を多角的に捉える習慣が身につきます。この習慣こそが、商談や会議で相手の真意や課題を深く引き出すための質問を生み出す土台となるのです。相手が話していることの「次に聞くべきこと」が見えてくるようになります。
質問の「型」を意識する小さな工夫
質問には様々な「型」があります。情報を得るための質問、相手の考えを引き出す質問、共感を深める質問などです。これらの型を意識することも、質問の質を高める上で役立ちます。
例えば、単に「はい/いいえ」で答えられるクローズドクエスチョンだけでなく、「どのような状況ですか」「その点についてどう思われますか」といったオープンクエスチョンを使い分けることは基本的なテクニックです。さらに一歩進んで、以下のような視点を質問に加えてみるのはどうでしょうか。
- 原因だけでなく解決策に焦点を当てる質問: 「なぜうまくいかないのですか」だけでなく、「どうすればこの状況を改善できるでしょうか」と尋ねる。
- 仮説や可能性を探る質問: 「もし〇〇が可能なら、どのような変化が起こるでしょうか」と、未来や理想の状態について尋ねる。
- 相手の思考プロセスに迫る質問: 「そのアイデアはどのようなきっかけで生まれたのですか」「その結論に至った理由は？」と、思考の背景を尋ねる。
これらの質問の型を知識として知っているだけでなく、日々の業務の中で意識的に使ってみることが大切です。最初はぎこちなくても、繰り返し試すことで自然に口から出るようになります。特に、商談や会議の前に「今日は相手にどんな情報を引き出したいか」「そのためにどんな種類の質問をしようか」と少しだけ考えてみるだけでも、質問の質は大きく変わるでしょう。
自分自身への「小さな質問」
そして、最も見落とされがちなのが、「自分自身への質問」です。日々の業務を終えた後や、新しい業務に取りかかる前に、少し立ち止まって自分に問いかけてみる習慣は、自己成長や課題解決に非常に有効です。
- 今日の業務で、最も「発見」があった瞬間はいつだろうか？それはなぜだろう？
- 今日、もっとスムーズに進める方法はなかっただろうか？具体的にどこに改善の余地があるだろう？
- 自分は今、何に最も関心があるだろうか？それについてもう少し深く知るにはどうすれば良いだろう？
こうした自分自身への「小さな質問」は、自分自身の思考を整理し、新たな気づきを与えてくれます。これは、そのまま他人への質問の引き出しを増やすことにも繋がります。自分がどのような疑問を持つかを知ることは、他人がどのような疑問を持ちうるかを推測する訓練にもなるからです。
まとめ
質問の質を高めることは、特別なスキルというより、日々の「聞く」「考える」「問いかける」という当たり前の行動を、少しだけ意識的に行うことから始まります。日常会話や情報に触れる際に背景や意図を考える、商談や会議で質問の型を意識的に使う、そして自分自身に問いかける時間を持つ。
これらの「小さな発見」を日々の習慣に取り入れることで、あなたの質問はより深く、より有益なものへと変化していくはずです。それは、円滑なコミュニケーションや、新しい課題解決への道を開くきっかけとなるでしょう。今日から、あなたの「聞く」そして「問いかける」意識を少しだけ変えてみてはいかがでしょうか。